日垣隆『サイエンス・サイトーク 愛は科学で解けるのか』

TBSラジオの「サイエンス・サイトーク」という科学トーク番組の活字版ということらしい。

有村という女子アナとジャーナリストの日垣隆が、第一線の研究者を呼んで3人で対談するという形式なのだが、実に面白い話が満載である。例えば、「セックスは子孫を残すための行為であり、本来の目的から外れたセックスをしたりセックスで遊んだりするのは人間だけである」なんて俗説があるけれど、実はそんなことはないそうだ。ゴリラには強姦もあるし、ボノボ(ピグミーチンパンジーと昔は呼ばれていた)には売春もあるし、何とボノボはバック(いわゆる動物的な体位)だけじゃなくて正常位で交尾をすることだってあるそうなのだ。

そう言えば、ボスが交代したら、前のボスが産ませた子供を片っ端から殺して、それによってメスが興奮する――なんて猿がいると以前どこかで聞いたこともある。「同種で殺し合うのは人間だけなんですッ!」などとヒステリックに叫んでいる方々もいるけれど、そんな人が「強姦するゴリラ」や「売春するボノボ」や「前のボスが産んだ子供を殺害する猿」を知ったらどう反応するのか、興味深いところではある。

話が脱線したが、もちろん本書は猿の話ばかりではなく、実に様々な事象から「人間」や「愛」の本質を誠実に探ろうとしている。少しばかりの好奇心がある人ならば誰でも楽しめるだろう。珠玉の1冊……とするのは言い過ぎだろうか。でも最上級の本とは「価値観を揺さぶる本」だと俺は思うのだ。面白さはかなりのレベルである。必読。