柄谷行人『NAM原理』

NAM(New Associationist Movement)は「新連合主義運動」とでも訳される、いわゆる運動会じゃない方の「運動」である。「資本と国家を揚棄する」と書くと難しいので俺なりに言い換えると、要は共産主義や社会主義やアナーキズムのように、従来の資本制と国家への対抗を組織・実践する――つまり従来の資本制と国家に「否!」を叩きつける運動なのだ。ただ連合主義というと誤解される恐れが強いし、NAMはトランスナショナルな性格を持つため、あえてNAMと表記するのだそうだ。まあ俺だって完全にNAMの理念を理解したとは思えないし、しばしば本書で表現される「NAM的なもの」のニュアンスは、本書を読まねばピンと来ないだろう。俺なんて読んでも完全にはピンと来ていない。だから、こう大ざっぱに部分だけをすくいとってしまうのはどうかなあと思うが、いくつかNAM的な活動の中で興味深いものを列挙してみたい。

まずNAMでは、基本的に全ての代表者が「選挙+くじ引き」で選ばれる。くじ引きを取り入れることで、ベストな選択は難しくなる。しかし選挙もあるからクソは選ばれないし、地位が官僚的に固定化せずに流動化するので、地位に対して固執することが不可能だし、そもそも固執する意味もなくなる。また代表者に選ばれても「運が良い」だけだから威張れないし、落選しても「運が悪かった」だけである。しかも、くじ引きを取り入れることで利権争いが消失する(らしい)ので、派閥間のミジメな争いも必要なく、代表者や他の人への協力を拒むような理由もなくなる。

はっきり言って完全に理解したとはとても言えないのだが、代表者が強烈にリードせねばならない社会そのものがそもそも「否!」であり、あくまでもアソシエーション(連合)によって社会が運営されるべきだ、ということなのだろうか?

また、NAMでは「LETS(Local Exchange Trading System)」を採用する。LETSとは、「地域交換取引制度」と訳される。つまりLETSとはその地域内で通用する地域通貨だが、LETSの特性は……ああ、長くなったので、もうやめよう。コレがまた、説明しようとすると長いんだ。この続編を読んだ時に気が向いたら説明する……かもしれないし、面倒だったら説明しないかもしれない。しなくても怒らないで下さい。まあ安い(1200円)し薄いし難解というわけでもないから、もし興味があれば買うべし。序文で柄谷行人が言っているように、第二章(講演)から読むのがわかりやすいです。

ちなみにドラゴンボールに出てくるナムとは何の関係もありません。南無。