ポール・オースター『幽霊たち』

80年代アメリカ文学の代表作らしい。大した事件は何も起こらず、登場人物もかなり少なくて、一見「何がおもろいねん」という退屈な設定にも思われるが、現実と虚構の境目や自己と他者の境目がグニャグニャになっていくようなところがあって、こーゆー本は、けっこう俺の好みの部類だ。

私立探偵ブルーは、変装した男ホワイトから「ブラックを見張れ」という依頼を受けるが、ブラックの日常には何の変化も起こらない。ただただ何かを書き、読んでいるだけだ。この奇妙な仕事を延々と続けるうちにブルーは次第に焦りや不安を覚え――といった感じのストーリーだろうか。

ちなみに本書の翻訳を手がけている柴田元幸は、いま翻訳者として最も人気があるんじゃないだろうか。柴田元幸は『翻訳夜話』で村上春樹と対談していることでも有名。