吉田純『インターネット空間の社会学』

パソコン通信のユーザで草の根BBSを自分で開設していたこともあった著者が、ハーバーマスという社会学者(哲学者・思想家とも呼ばれる)の公共圏概念を援用しつつ、私的関心と学問的関心の重なり合ったインターネット空間の、秩序形成・規範形成・意思形成の可能性を探る――といった内容の著書である。博士論文が下敷きになっているらしいが、本当に、良くも悪くも「論文」といった感じだ。学術書なのだから堅苦しいのは当たり前だが、学位論文だけあって、一般的に出版される評論などとはまた違った堅さがある。論文を読みなれていない人は、最初けっこう戸惑うかもしれないな……なんて偉そうに書いた俺だってスラスラ読めたわけではないけどね。むしろ難しくてわからないまま読み進めた箇所ばかりだ。

俺はハーバーマスにそれほど興味も思い入れもないから、どこまで本書が論理として妥当であるか俺にはちょっとわからないけれど、インターネットを感覚だけで乱暴に評価する、エッセイなのか評論なのかわからない本よりは良いんじゃないかと思う。