中島義道『哲学者とは何か』

これまでにも中島義道の本は何冊か読んだのだが、最高傑作だと俺が思っている『「哲学実技」のすすめ――そして誰もいなくなった……』に比べると、まあ正直なところ、どれも見劣りするね。

それにしても、中島義道は俺にはイマイチ理解できないところがある。まず中島義道は哲学ブームや哲学入門書を激しく嫌悪し糾弾するわりには、裏腹というか何というか、哲学入門書をかなり多く書いている。自分こそが哲学ブームの音頭をとり、哲学ブームの恩恵を受けてきたのではないか? また本書でも繰り返し語られる「七歳の頃から死の恐怖にとりつかれてきた」という幼児体験がどうもピンと来ない。さらには、中島義道が「哲学とは何か」「哲学者とは何か」と語るときの、あの何とも言えないニュアンス。哲学者を自嘲的に「半病人」などと形容しながら、「哲学は誰にでもできるわけではない」という選民的で屈折した誇りに満ちている、その二重性。まあインテリに多いタイプではあるし、中島義道に言わせれば、それこそが「哲学者」ということなのかもしれないが……。