東浩紀+大塚英志『新現実 Vol.01』

オタクであり哲学研究者である東浩紀と編集者であり漫画原作者であり批評家としても精力的に活動している大塚英志が、新しく立ち上げたシリーズらしい。小林よしのりの『わしズム』や本書のような出版社主導でない雑誌の立ち上げは、重要な試みなのだそうだ。

『批評空間』や『わしズム』を引き合いに出しているのだから位置付けとしては批評誌なのだろうが、何しろ批評めいたものが、東浩紀と大塚英志の対談のみである。他は、新海誠というアニメーターの漫画や、ぜんぜん知らないミステリ作家の文章などだ。正直つまらなかった。

東浩紀と大塚英志の対談は、大きな印象としては、セキュリティやオタクを題材としつつ、東浩紀の批評家としての態度(どう現代社会や自分の問題意識や論壇と付き合うか)を大塚英志が執拗かつ批判的に問い詰めるというものだ。軽々しくわかったつもりにならない大塚英志の態度は素晴らしいと思うが、反面、何の言質を取ろうとしていたのかイマイチわからなかったので、その意味では相当フラストレーションがたまった。でも大塚英志は攻撃的だなあ。

東浩紀や大塚英志に興味ある人は対談の箇所だけ立ち読みすれば良いと思うが、正直あまり買う価値はなかったかも。