伴田良輔+村上春樹『PAPARAZZI』

パパラッチが写したセレブの写真と村上春樹のエッセイから成る本。まあ、村上春樹のファン(あるいはパパラッチマニアや写真好きやアメリカの業界に興味のある人)以外は、わざわざ読むほどの本でもないかな。基本的には村上春樹のファングッズであろう。ちなみに村上春樹の「セレブたちの第三の角」というエッセイでは、カメラに見せたセレブの表情を以下のように表現している。

ここに収められたセレブたちの顔をよくごらんになってほしい。彼らは常に演技しているのだ。そして彼らが演技しているのは後天的に作りあげられた新しい自我なのである。彼らは例外なく三本の自我の角を持っている。一本は幻想としての自我であり、一本は現実の個人としての自我であり、最後の一本はその二本のバランスをとるために生じた架空の――あるいは暫定的な――自我である。その第三の角は実際には存在しない。ただ存在しているように感じられるだけである。(中略)
本書に収められた写真は、様々な有名人たちが一人の人間として己れの新しい自我にどのように耐え、そして同時にそれをどのようにして楽しんだかという記録である。読者は彼らの目や、口もとや、その体の微妙なこわばりから様々な事実を感じとられるに違いない。

そう言われると、明らかにカメラの存在を意識しているセレブは言うまでもなく、「カメラなんて知らないよ」といった感じのセレブですら、「ナチュラル」を演技する微妙な綾が感じられるような気もする。しかしまあ、なんだな、マリリン・モンローはセクシーだね。