『若草物語 ナンとジョー先生 6』

若草物語 ナンとジョー先生 6 [DVD]

若草物語 ナンとジョー先生 6 [DVD]

若草物語』の四姉妹の次女・ジョーと夫のベアが、理想の教育を追求するため全寮制の学園「プラムフィールド」を設立して、おてんば娘・ナンを始めとした純粋だが個性の強い子どもたちと格闘する――というアウトラインの、ハウス食品がスポンサーのテレビアニメシリーズ「世界名作劇場」のDVD版。第6巻には以下の放送が収録されている。

第21話:先生をぶちなさい!
第22話:ページさんからの手紙
第23話:誰もいない庭
第24話:素直になれなくて

第6巻に収録された第22話「ページさんからの手紙」は、俺の最も好きなエピソードである。ページさんのところで農業を学びながら暮らすことになったダンは、仕事をサボることもないし、逃げ出すこともない。しかし相変わらず大人(ページさん)に対する警戒の姿勢をくずすことはないし、必要以上に口を開くこともない。
しかしページさんは、じきに「あること」に気づく。大人に対しては獣のような態度を見せるダンだが、動植物や昆虫といった身の回りの自然に対して、意外なほどに強い興味と愛情を見せるのである。その興味を一段深いところに導いてやりたいと思ったページさんは、決して語ったり押し付けたりすることなく、ダンの部屋にそっと博物学の本(図鑑だろうか)を置く。効果はてきめんで、ダンは時間を忘れ、どんどん博物学の魅力に惹き込まれていく。時間を忘れて本を読み、自然を観察し、喜びの表情を見せる。ページさんは「ダンの前に知識の扉を開けた」と確信するのである。
プラムフィールドで見つけられなかった「学ぶことの喜び」を、ページさんが発見する。そしてダンは、自分を見つめ直す営みを始める。自分はどうしたいのか。町で孤独にヤクザな暮らしをしていた自分と、プラムフィールドで学ぶ自分。そしてプラムフィールドで犯した過ち――。知識の扉を開いたことで、深い内省の心も生まれたのである。しかし、良い兆しが見えてきた最中、ダンは町で生きていた頃に争ったゴロツキに襲われ、負傷してしまう。銃で撃たれた朦朧とした頭でダンは自分の「家」はどこなのかと考える。そしてダンは撃たれた足で何週間も歩き、命からがらプラムフィールドに帰り着くのである。力尽き倒れていたところをジョー先生に発見されたときの、ダンの言葉、これは泣ける。
第22話と第23話は必見であろう。ボロ泣きです。
自分に甘く些細な嘘をついてしまうナットのエピソード、第21話「先生をぶちなさい!」も面白い。自分に甘く、ちょっとした嘘をつくことが癖になっているナット。それを変えたいと思ったベア先生は、嘘をついたとき、ベア先生がナットを叩くのではなく、ナットがベア先生を叩くことにしよう、と提案する。以前こうすることで嘘をつく癖が治った生徒がいるからである(それは幼き日のエミルだったことが後に判明する)。ベア先生を心から尊敬するナットは、もう絶対に嘘をつかないと誓うが、心の弱さ故に、やはり嘘をついてしまう――。嘘をつくたびに痛い思いをする、このような約束は、生半可な覚悟の先生には実行できないだろう。また、その生徒を心から信頼できないと、できるものではない。先生を叩くことに何の躊躇もない生徒だっているかもしれないし、先生を叩くために嘘をつく生徒だっているかもしれないのだ。