ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)

ティム・オブライエンは、ベトナム戦争の従軍経験から、戦争の話をひたすら書き続ける作家である。
この短編集では、作中の主人公の名前が「ティム・オブライエン」であり、何人かいる仲間の名前は同じで、他の短編にも共通して出てくる。村上春樹の言うとおり、危険な種類のコミットメントだと俺も思う。が、オブライエンはこうしなければ書けないことがあったのだろうな。
戦争といっても、少なくとも本書では、残虐なシーンはほとんど出てこない。ドンパチもあまりない。けれど、延々と続くこの戦場の描写や内面描写は、とにかく出口のなさにかけては天下一品である。どこまで読んでもどこにも行けない苦しさ。これがオブライエンの言う戦争なのだろうか。