佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』3巻

ブラックジャックによろしく(3) (モーニング KC)

ブラックジャックによろしく(3) (モーニング KC)

研修医(斉藤英二郎)が目にする日本の大学病院や医療現場の現状を描いた傑作漫画。斉藤は研修の配属先で毎回騒動を起こすが、それらの騒動は、ことごとく日本の医療が抱えている深い暗がりに足を踏み入れてしまう――というアウトライン。
第3巻と第4巻はNICU(新生児集中治療室)でのエピソード。要は未熟児として生まれた赤ちゃんの命を救う現場なのだが、やはり未熟児は体もずっと弱いため、亡くなってしまう赤ちゃんも多い。しかも未熟児の場合は何らかの障害を抱えてしまうことも多く、両親の苦悩や葛藤は倍増するのである。斉藤は、未熟児として生まれた双子の赤ちゃんの担当になる。斉藤は両親に子どもを受け入れてもらおうと奮闘するが、正論や理屈で説得しようとして、ことごとく跳ね返されてしまう。そんな斉藤に、指導医(オーベン)である高砂は静かに語る。

オメーは正しいよ
皆 何も考えずに子供を産みすぎだよな……
考えてみりゃ 子供を産むなんて
ぶっちゃけて言えばリスクを負う事なんだからよ……
ウチみたいに4人もいたら とんでもねー奴が出てこんとも限らんぜ
どんなヤクザ者になろうと……
どんな犯罪者になろうと……
全部引き受けるって事が子供を産むって事だ……
リスクを背負う覚悟がないのなら……
子供なんて作っちゃいけねえのさ……


理屈じゃそうだろ……?


要は 理屈じゃ子供は産めねえんだよ


未熟児を受け入れるのも同じ……
あの奥さんだって 理屈じゃどうするべきかわかってるよ……
新生児科の医者になってもうずいぶんたつが……
未熟児を見て全く冷静でいられた親はいなかったぞ……
あの夫婦は今 周囲のすべてから責められている
親族……
社会……
自分の良心……
周り中 追い詰めるものばかりだ……
彼らに今必要なものはよ……
近くに追いつめねー奴がいてやる事じゃねーのかな〜〜……
時間がね……かかるのよ……

そして斉藤は、この複雑で辛い現実のダブルバインドの前に、首を垂れるしかないのである。しかし斉藤の凄いところは、ここで終わらないところだ。現実を知らないし空気も読めない、だからこそ斉藤はタブーに挑戦し続ける。