- 作者: 佐藤秀峰
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/01/20
- メディア: コミック
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第3巻と第4巻はNICU(新生児集中治療室)でのエピソード。未熟児として生まれた双子の赤ちゃんの担当になった斉藤は、両親に子どもを受け入れてもらおうと必死で努力するが、双子の弟はダウン症(いわゆる障害)を発症していることが判明する。しかも障害を抱えていない双子の兄は衰弱して命を落とすのである。ただでさえ未熟児として生まれたのに、障害も抱えてしまっていたということで、父親は、断固たる決意で、手術の必要な子どもに対する同意書へのサインを拒否するのである。
実はこの両親、決して責任感のない夫婦でも常識のない夫婦でもない。2人は、何年にも渡る屈辱的な不妊治療を経て、やっと子供を授かったのである。子どもに対する愛着も人一倍強い。だからこそ、特に父親は、せっかく助かっても厳しい人生を送ることになるであろう子どものことを思うと、手術に同意できないのである。ここに安っぽい偽善や杓子定規の倫理が入り込む余地はない。誰もが本気で葛藤し、足掻いている。物凄いエピソードだ。「これ」を漫画で描いたか――という衝撃は、発表から5年以上経った今でも薄れることはない。傑作である。