夏目漱石『坊っちゃん』

坊っちゃん

坊っちゃん

冒頭から小気味良い文体が続くが、主人公がどうにもこうにも単細胞で、読んでいて嫌になってくる。クライマックスも、学生の喧嘩を止めに入ったはずが一緒になって暴れ回ったり、口喧嘩で勝てないから暴力で「赤シャツ」と「野だ」を叩きのめしたりと、とても良い人とは言えない。しかし四国に赴任した後の周囲のクズっぷりが際立ち、だんだん主人公を「愛すべき存在」として捉えられるようになってくる。いわゆる「高尚」な感じは全然しないが、読者を引き込む文章力は流石と言って良い。

ただ、「こころ」より「坊っちゃん」の方が良いかと言われると、どうだろう。わたしが読んでいる評論家には「こころ派」ではなく「坊っちゃん派」であるべきという人が結構いるのだが。

余談

わたしは初代Galaxy Tabをデジタルデータの表示デバイスとして未だに使っているのだが、初代Galaxy Tabは一応電話であった。一目見て電話としては使いづらいとわかるだろうが、電話をかける姿のインパクトはなかなかのもので、忘年会での盛り上げツールとしては大いに役立った。電話としての役目はとっくに終えた今も、青空文庫や自炊本(PDF化した書籍)の閲覧に十分すぎるほど役立っている。