坪谷邦生『人材マネジメントの壺 テーマ2. 等級:目的を持った人が自らの意志で登りたくなる階段が等級の理想形』

元リクルートマネジメントソリューションズの方。個人出版のような形でテーマ別の入門書を7冊も出しており、気になったので順次読んでいる。第2巻のテーマは等級だが、「この人わかっているな」という印象を持った。

人事制度のコアは等級制度・評価制度・報酬制度の3つで構成されるが、「もちろん全部重要なのは承知の上で、あえて言うと、この3つで一番重要なのは何?」と聞いてみると、素人か玄人か大体わかる。素人は「そりゃあ金でしょ、報酬制度だよ」と言う。そりゃそうだろう。ちょっとわかっている人や人事に関心のある方は「やっぱり評価の納得感が重要だから評価制度です」とか言ったりするわけだ。で、人事マネジメントのことがある程度わかっている人は「人事マネジメントのあらゆる運用の基準になる等級制度が最も大事だ」と言うのではなかろうか。本書も「等級制度とはモノサシである」と、今わたしが書いたことと全く同じことを書いている。

もう少し書くと、等級制度とは、物差しであると共に、序列づけの基準である。人と人をどのように差をつけていくか、ということだ。能力で序列付けしますということであれば「能力等級」だし、部下の多さや扱うビジネスの規模の大きさで序列を付ける場合もある。基本的には能力なんだけど能力って判別しづらいから年長者は優秀だってみなそうという考え方もある。年功序列だ。そう、人事制度は等級がベースなのである。そこに評価と報酬の仕組みがついてくる。

著者は「世の中の人事制度に関する本を読んで、等級制度が書かれていないものがあったが、れらは全て説明が破綻しているか、説明が極めて複雑になっていた」という内容のコメントを書いていたが、これも「よく言ってくれた」と思う。わたしも10年ちょっと前、人事制度に関する本を片っ端から手に取った結果、等級の概念なしに人事制度を説明しようとしている本に何冊も遭遇して、本当に何じゃそりゃと思った記憶がある。その手の独自理論は大抵役に立たない。