肥後文雄『定昇のない業績賃金メリットペイ』

日本の場合、基本給の上昇はベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)、昇格に分けられる。

ベースアップとは、景気(インフレ率とかね)や会社業績に応じて、全社員一律の額 or 率で給与が上がることである。文字通り給与のベースが一律で上がるのでベースアップと呼ばれる。

定期昇給とは、年齢や勤続年数・人事評価などに応じて、個人別に昇給することだ。

昇格は、要するに出世することだ。色々な考え方があるが、基本的には「この役割を担ってもらう」という期待値に対して支払われる。

ここで気になるのは「定昇」である。「年齢・勤続年数・個人業績など」と書いたが、年齢や勤続年数が、なぜ給与に反映されるのだろうか? これは別に日本だけではないが、世界的な潮流としては、やはり年齢や勤続年数そのものでお金が増えたり減ったりということは減っている。著者も書いていて同意見なのだが、わたしは何も年齢や勤続年数が価値を生まないと言いたいわけではない。生む場合もあると思っているし、生むようなケースをわたしは知っている。ただしその場合、年齢や勤続年数が高いことが既に個人業績に反映されているはずなのである。であれば、個人業績をしっかり見て、業績の高低を基本給に組み込んでいけば良い、というのがアメリカなどで主流になっている考え方(メリット・インクリース)である。

本書は20年前の本だが、メリットインクリースについて詳述した日本の文献は今も少なく、その意味で貴重だし勉強にある。ただしネットでググると日本の有識者の記事などがけっこう出てくるため、その辺も併せて読むと理解が深まるだろう。