古賀史健『さみしい夜にはペンを持て』

「文章を書くこと」が、人生においていかに救いとなるか?

本書で詳しく説明されているように、「思う」ことと「考える」ことは違う。構造化せずに思ったことを思ったまましゃべること、それにも一定の価値があって、しゃべるとスッキリする。しかしその手の言葉は、しゃべるそばから泡のように消えてしまう。一方、書くことは考えることである。構造化して書くこともそうだし、「楽しかった」の一言で済んでしまうことも実際にはもっともっと長い心の変遷を経て「たのしかった」に繋がっている。そうした書くこと=考えることの実態に目を向けて、毎日書く。まずは10日ほど書いてみる。そうすることでわかることがある――そんなことを物語形式で説明した本。

物語の舞台は海底だ。しかし擬人化されたイカやタコ・ヤドカリ・サメといった海の生物をモチーフとしているものの、これは明らかに現実の中学校だ。人を多く集めて押し込めた場所は、ふとした拍子に簡単に地獄になる。クラスのボスだのナンバー2だの、スクールカーストだの、○○グループだの、ウザいとしか言いようのない現実が描かれている。

人間は、もっと独りの時間を大切にすべきなのだろう。

常に誰かと繋がって云々するのではなく、あえて独りの時間を作る。自分と向き合う手段をもっと洗練させる。独りの時間を作ることがもっと推奨され、称賛されるようになる。

そのために「書くこと」が必要なのだろうと。