山口つばさ『ブルーピリオド』7巻

ごくフツーの特に夢も将来展望もない流され高校生だった主人公が、急に美術に目覚めて東京藝術大学を目指す……というストーリーだったが、6巻で遂に合格! 7巻からは藝大篇に突入! ということでかなり期待していたのだが、うーん、何となく拍子抜けというのが正直なところ。

美大・藝大は2浪・3浪は当たり前で、4浪以上の方も珍しくないと聞く。そこでわたしが何となく思っていたのは、現役合格は必ずしも良いことなのだろうか、ということだ。主人公はやたらと現役合格にこだわっていたし、藝大への現役合格が決まったときは読者として当然ワクワクした。しかし現実として、何年も必死こいてデッサンした経験は必ずチカラとして蓄積され、どこかで役に立つとわたしは思うのである。

主人公はたったの1年間しか絵を書いた経験がない。挫折らしい挫折もしていない。単にどこで挫折の経験を積むかという話なのかもしれないが、力のないまま大学に行ってもついていけないというのは、何も藝大に限った話ではない。一般の学部でもそうだし、部活動でもそうだし、企業でもそうだ。

で、あまりにもわかりやすすぎる形で、壁にブチ当たって独りでメソメソしたりヤル気をなくしたりしている。

この主人公の心の有りように、わたしは感情移入できない。

これはわかっていた話だからである。

現役合格は非常に難しいと同時に、現役合格者は修練の時間が圧倒的に不足している。主人公のように受験1年前から絵を始めましたという人間は尚更だ。

浪人していた予備校の仲間や予備校の先生は、指摘しなかったのだろうか?

物語としては当然このままで終わるはずもなく、どこかで持ち直すのだろうが、あんまり簡単に持ち直されてもピンと来ない。楽しみだが、話の持って行き方は難しくなったなと思った。