ヤマシタトモコ『違国日記』5巻

田汲朝は、中3の冬に突然事故で両親を亡くしてしまう。そして呆然としたまま葬式まで上げてしまい、そのまま少女小説家である母親の妹(高代槙生)に引き取られることになる。と言っても、槙生は親戚間で姪がたらい回しにされるのが耐えられず衝動的に引き取っただけで、実は超人見知りで、他人と上手くコミュニケーションを取るのが得意ではなく、加えて姉妹の仲がめちゃくちゃ悪くて姉(朝の母親)のことは死んでも悲しいとすら思えないほど憎んでいた。それでも引き取ったからには、2人で暮らしていかなければならないわけで……というプロローグ。

なんだが、あんまり作品の雰囲気をシャープには表現し切れていない気がする。小学館のサイトを観た方が早いかも。

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素直な高1の女子高生が、「変な大人」と同居する……という構図なんだ、けど、これでもちょっと違うかな。

いやこれはこれで正しいけど、本作の一部しか表現できてないというか。

モチーフが多層なんだよね。

他にも、良い年こいて不器用な槙生の生きづらさというモチーフがあり、不器用な槙生に笑っていてほしいが故に距離を置いた元カレとの関係性というモチーフがあり、死んでもなお赦すことができない姉と妹というモチーフがあり、まだ両親の死を真に受け止めきれず「素直」で「明るい」ままの主人公がどのように両親の死を受け入れていくかというモチーフがあって。

とにかく魂の奥深くを揺さぶるような感覚がある。

わたしはヤマシタトモコの作品が大好きで、いわゆるBL系以外は全て何度も熟読玩味しているんだが、本作はヤマシタトモコの最高傑作になりつつあると思う。