このブログは基本的に、読んだ本や漫画やDVDの記録・感想を付けていくだけなのだが、たまにはわたしなりの視点で作品をピックアップして紹介したいと思って、数年前に以下の記事をエントリー。
incubator.hatenablog.com
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けっこう面白いものを書いたと思っているんだけど、この後が続かず、早幾年。なかなか筆が進まない。
そんな中で、料理・グルメ漫画をピックアップしたいなと思ったのは、最近よく料理漫画やグルメ漫画を買っているなと思ったから。というか単純に、料理漫画・グルメ漫画が猛烈に発売されているんだよね。ブームなんだろうな。お手軽に作れるからかもしれない。料理を通じて人間関係トラブルや人生の悩みまで解決するというのは『美味しんぼ』でフォーマットが出来上がっているし、料理人が料理を通じて幸せや感動を与えるという構造も、誰もが毎日食事をしているからわかりやすい……と、やや批判めいた口調で書いてしまったが、何故か料理・グルメ漫画はついつい買ってしまうんだよな。
極私的に好きな作品を10選という形で紹介したい。
佐々木倫子『Heaven?』全6巻
ロワン ディシー(この世の果て)というフレンチレストランで繰り広げられるドタバタコメディ。佐々木倫子という漫画家は、綿密な取材に基づく「お仕事あるある」をコメディに仕立て上げるのがめちゃくちゃ巧い漫画家なのだが、この作品はもう最高に最高。本作はこの手の漫画紹介で見かけたことがないが、埋もれさせるには勿体ない大傑作。最初から最後まで笑える。
白乃雪『あたりのキッチン!』全4巻
生まれてから1人も友達がいないまま女子大生になったコミュ力の低い主人公が、自分の唯一の特技である料理を活かそうと、幼い頃に住んでいた町の定食屋でバイトをしながら自分を見つめていく話。非常に面白かったのだが、4巻で完結。綺麗な終わり方だったけど続きが読みたい。
さもえど太郎『Artiste』1〜5巻
鼻や舌が子供の頃から異様に鋭いが、そのせいで子供の頃から皆に気味悪がられて自尊心がへし折られ、コミュニケーション力の低いまま育った主人公が、その才を見初められて大きなフレンチレストランの副料理長に抜擢されるという話。上で紹介した『あたりのキッチン!』と主人公の設定は似ているが、こちらはプロの料理人。丁寧な話運びで、連載中の料理漫画では一番好き。
ヴァージニア二等兵『異世界居酒屋「のぶ」』1〜10巻
本来は商店街の一角にあるはずの居酒屋の表の入り口が、なぜか異世界と繋がってしまい、帝国の古都・アイテーリアに住む様々な人々がお客として訪れるようになるという話。店主兼料理人のノブは元々老舗料亭の板前で、日本料理の腕前が見事という設定なのだが、料理が本当に美味しそう。なろう系と侮るなかれ。
雨隠ギド『甘々と稲妻』全12巻
上の4冊は料理人(バイト含む)が主人公だったが、この後は非料理人が主人公。本作は、奥さんに先立たれた父親と娘が、料理を介して絆を深めたり人間的に成長したりという話。ちょっともう信じられないぐらい面白かったのだが、12巻で完結。まだまだ読みたかったのだが、綺麗に終わったのでその辺は良かったなーと思う。good!アフタヌーンで最近『おとなりに銀河』という新作が始まったので期待。
綿貫芳子『オリオリスープ』全4巻
主人公の名前が原田織ヱ(はらだおりえ)で、主人公はスープ作りが好きでよくスープを作るから『オリオリスープ』というタイトル。主人公は本の装丁を手掛けるデザイナーということで、お仕事漫画の要素もある。当初は主人公がややメンヘラ気質というか、酔うと誰とでも寝ますみたいなあんまり感情移入できないタイプだったので、その辺が嫌な人もいるかも。ただ途中からは(ややナイーブであることは変わらないものの)メンヘラっぽくはなくなった。あと、各回が4月上旬・4月中旬・4月下旬……と1ヶ月を3分割して丁寧に描写しており、漫画にしては時間の流れが几帳面なのも珍しくて気に入った。
オトクニ『広告会社、男子寮のおかずくん』1〜5巻
中堅の広告代理店で働く若手営業マンの主人公が、毎週金曜日の夜に、寮に住む同僚と自炊パーティーをするという話。主人公の名前が西尾和(にし
おかず)なのと、自炊パーティーでおかずを作るから、おかずくんである。お仕事漫画としてもそれなりに面白く、続きがけっこう楽しみ。
たじまこと『水曜日のトリップランチ』1〜2巻
VR系の研究者のヒロイン・十和は、会社のみならず業界全体としても期待されている才能の塊だが、生活力がないし、仕事に熱中しすぎるとご飯を食べるのを忘れてしまう。秘書課に勤務する真面目系男子の主人公は、会社の指示で、毎週水曜日に十和の元を訪れ、身の回りの世話をして、ランチを作る……と、そういう設定。優秀で自立した女性を、真面目系男子が献身的に支える……女の妄想とも言えるし、男の妄想とも言える。
かねもりあやみ+久住昌之『サチのお寺ごはん』1〜7巻
主人公(臼井幸)は、「さちがうすい」というその名の通りに幸の薄い人生を送り、仕事に振り回され、コンビニ弁当やインスタント食品で夕食を済ませる毎日。けれどある日、ふとしたきっかけで縁泉寺の料理上手な住職・源導と出会い、寺でふるまわれた精進料理に心を動かされる。そして臼井幸は、ちょくちょく縁泉寺を訪れ、精進料理を食べたり、レシピを自宅で再現したりして、心境や生活を少しずつ変化させていくという話。『孤独のグルメ』でも知られる久住昌之が原案協力ということもあり、うまくまとまっているなと思う。
村田雄介『マンガ家夜食研究所』
漫画家デビュー以来ずっと夜食を作り続けてきた漫画家が、自身の夜食ノウハウを開陳する的な話。面白いというか、巧いという感じ。
次点:せきやてつじ『バンビ〜ノ!』全15巻、『バンビ〜ノ!SECOND』全13巻
熱血料理漫画。面白かったんだけど、ちょっと後半がご都合主義というかね。あと料理漫画としてかなり有名なので、あえてわたしが取り上げる必要もないかなと思って次点扱い。面白いんだけどね。
参考:九井諒子『ダンジョン飯』1〜8巻、桑原太矩『空挺ドラゴンズ』1〜8巻
面白いし、飯の描写もなかなか個性的。だけど出てくる料理の素材が空想上の産物なんだよね。ダンジョン内のモンスターとか、空を飛ぶ龍とか。なので厳密な意味での料理・グルメ漫画とは言えないかなと思って参考扱い。漫画としては本当に面白いんだけど。