葦原大介『ワールドトリガー』21巻

ワールドトリガー 21 (ジャンプコミックス)

ワールドトリガー 21 (ジャンプコミックス)

  • 作者:葦原 大介
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/12/04
  • メディア: コミック
少年誌で読めるSF漫画の筆頭……だったが、作者がカラダを酷使し過ぎて一時期は数年に渡る休載。現在は月刊誌で連載をしているはず。おかげで刊行スピードは遅くなったが、良い作品が読めるだけで良しとすべきなんだろうな。

チーム戦の描写が相変わらず丁寧で、それこそが本作最大の魅力でもあるのだが、丁寧すぎて「そもそも何のために戦っているのか」という全体像がボヤケてしまいがちな気がする。もう少し展開をスピーディーにしてもバチは当たらない。

木多康昭『喧嘩稼業』12巻

喧嘩稼業(12) (ヤンマガKCスペシャル)

喧嘩稼業(12) (ヤンマガKCスペシャル)

  • 作者:木多 康昭
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/06
  • メディア: コミック
著者の木多康昭は元々、過激な下ネタや毒舌・パロディ・ブラックジョークを売りにしたギャグ漫画家である。特に実在するタレントや他の漫画家を過激にイジることが多く、歴代の週刊少年ジャンプ作品の中でも屈指の異色作『幕張』、そして週刊少年マガジン移籍後の『泣くようぐいす』『平成義民伝説 代表人』のいずれも、あまりにも過激すぎてクレームが入ったり編集部チェックが厳しくなったりする。その結果、当初の設定やキャラが「なかったこと」になる、連載版からコミックス版に際して大幅な描き直しや削除が入る、描きたいことを描かせてもらえない、等の問題を引き起こし、どれも打ち切りに近い形で終了してしまう。

しかしその後始まった『喧嘩商売』は、過激さは残るものの、過激なイジりは脇役が繰り広げるサイドストーリーという体裁にすることで、何とかメインストーリーが破綻せずに進行。その続編『喧嘩稼業』ではメインストーリーに絞って話を展開し、過激なイジりは主に巻末の作者あとがきだけになっている。過激なギャグ漫画家が、自らの過激さと何とか折り合いをつけた事例ということになるのだろうか(笑)

ただ、この木多康昭という人は、作風は過激だが、絵柄は繊細だししっかり描き込みをするなど、相当しっかり働いている漫画家であるとも思う。そのため休みがないことの不満を作中や巻末のあとがきで度々語っており、近年は不定期連載となっている。ただまあ、不定期連載だけど定期的にコミックスを出してくれているので、その点は凄いと思う。鶴田謙二や三浦建太郎・冨樫義博に比べたらかなり頑張っている。まあ冨樫義博に至っては最近「描いてくれるだけでありがとう」という境地に至っているので、この人も悪くはないか。

さて、前フリが長くなったが、12巻は作中屈指の実力者として描かれるフルコンタクト空手・進道塾の上杉均の試合がメインである。進道塾や上杉均はメインストーリーに深く関わっているので必ず勝つだろうが、対戦相手である、余命1年の末期ガンでありながら生涯最後の戦いとして大勝負に出た合気道の達人・芝原剛盛が格好良すぎて実に痺れる。主役を食う勢いというのはまさにこのことであろう。

早く13巻が読みたいが、まあ1年は待つだろうな。

谷川ニコ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』16巻

通称わたモテ。

以前も書いたが、本作は当初、スクールカースト下位のぼっち生活を自虐的に描き、そして今は何故か一周回って色々な友達ができてしまうという逆説的なノリを描いている漫画。笑いの部分も、主人公のクズっぷりも、それでも何となく友情を良いものだと思い始めている部分も、もうただただ面白いとしか言いようがない。読むと浄化されてしまう。

滝川廉治+陶延リュウ+沙村広明『無限の住人 〜幕末ノ章〜』1巻

あの『無限の住人』の公式続編!

……公式???

よく見るとクレジットも複雑だが、要するに原作が滝川廉治という小説家、漫画(作画じゃないんだ)が陶延リュウという新人漫画家、そして沙村広明は「協力」という位置づけらしい。協力て。

最近のマンガ業界は、意味不明なグッズ商売・無理筋な延命などではなく、スピンオフや、とっくに終わった作品を「続編」という形で商売するのが流行だ。その多くの場合、元々の漫画家ではなく、別の作家が実際に漫画を描くのである。そうすると、元の漫画家は「原案」だの「協力」だのでクレジットされて何もしないでも報酬を得られ、新人漫画家は世界観が与えられて、一定の知名度があるので、ファンが最初からついており、しかも本作だと原作までついており、要は「漫画制作」に専念できる。さらには、ファンは続編やスピンオフという形だが、好きな作品の続きが読める。

さて、冒頭やや皮肉めいて書いてしまったが、わたしは基本的にスピンオフや続編は「良いんじゃないの」という立場だ。もちろん酷い代物もあるんだが、つまらないものは読まなければ良いだけの話で、中には『今日からCITY HUNTER』や『からかい上手の(元)高木さん』のように、絵柄が元の漫画家に非常によく似ていて話も面白いものや、『ヴィジランテ』のようにオリジナルを超えちゃったんじゃないのというような大傑作漫画もある。要するに、作り手が元の作品の世界観を理解・リスペクトして、丁寧にモノを作れば良いわけである。

今日からCITY HUNTER 4巻 (ゼノンコミックス)

今日からCITY HUNTER 4巻 (ゼノンコミックス)

  • 作者:錦ソクラ
  • 発売日: 2019/06/20
  • メディア: Kindle版

その意味では、本作はお話作り・台詞回し・絵柄等々、非常に原作に寄せてきているなという気がする。さすがに絵柄については、沙村広明の初期の凄みは到底出せていないものの、近年の絵柄と比べると概ね遜色はない気もする。台詞回しや絵柄も同様で、読んでいて、少なくとも「ああ他人が作ってんだなー」というような違和感や白けのようなものは全然ない。

舞台は『無限の住人』オリジナルの舞台から80年後で、新撰組や坂本龍馬が登場する。なるほど、こうした混沌の時代と卍は合っているかもね。

続きが気になる。

野田サトル『ゴールデンカムイ』12〜19巻

11巻で買うのをストップしていたのだが、この度、数年ぶりに1〜11巻を読み返し、これは面白すぎるというので大急ぎで12巻以降をゲット。

……面白すぎる!

この漫画については元々1巻発売時から注目していたのだが、刺青人皮(未読の方は、差し当たりお宝の隠し場所の暗号と思ってもらって良い)を順番に集めてくるだけという「お使い漫画」に思えたというのが数年前。けど、単に飽きていただけだったんだろうな。久々に読み返したら、そんな「中だるみ感」は微塵も感じられなかった。

で、たまたまだが、19巻のラストが物凄い引き。

20巻が待ち切れない感じ。

山本崇一朗『それでも歩は寄せてくる』2巻

それでも歩は寄せてくる(2) (KCデラックス)

それでも歩は寄せてくる(2) (KCデラックス)

個人的には、作者の出世作『からかい上手の高木さん』のセルフパロディみたいなイメージ。『高木さん』は女が男をからかう(正確には男が女をからかおうとして失敗し、逆にからかわれるという流れを含む)構図で、本作は男が女をからかうという、男女逆転版なんだよね。で、『高木さん』の女は色々と全部見通してからかうわけだけど、それをそのまま男女逆転に置き換えてもマンネリ化するから、キャラ設定をいじって、本作では男の一途さ・朴訥さが結果的に女をドギマギさせてからかう形になる、とそういう基本骨格。

相変わらず面白くてわたしは肯定的に捉えているんだが、最近よく思うのは、山本崇一朗の作品は何故ここまで一瞬で読み終わるのか、ということである。内容がワンパターンだから? 大ゴマが多い? 文字が少ない? んー、確かに文字は少ない気がする。

山本崇一朗+寿々ゆうま『恋に恋するユカリちゃん』2〜3巻

恋に恋するユカリちゃん(2) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

恋に恋するユカリちゃん(2) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

恋に恋するユカリちゃん(3) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

恋に恋するユカリちゃん(3) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

『からかい上手の高木さん』のスピンオフ。

高木さんや西片くんのクラスメートに女3人組がいるが、この3人をフィーチャーした作品。

ほんっと何も起こらないので、すーっと読める。

それでもそれなりに面白いのは、山本崇一朗の企画力・構成力なんやろなー。

安田剛助『じけんじゃけん!』6巻

じけんじゃけん! 6 (ヤングアニマルコミックス)

じけんじゃけん! 6 (ヤングアニマルコミックス)

広島弁青春ミステリ漫画。

作者の描く女体はいちいちエロスがあって良いねと思っていたが、何と、顔や背の高さや胸の大きさだけでなく、脚の描き方までキャラごとに細かく変えていることが判明。

当たり前っちゃ当たり前か。でも改めて説明されると、唸るしかない。ここまでこだわれる人が漫画家として成功するんだろうな。

え? 内容? 言うまでもなく面白いです、ええ。ミステリのウンチクも広島あるあるもギャグもシリアス(と言うほどではないが)も全て高クオリティ。

ちなみに、広島弁の「広島弁ではじゃけんって言わんのんじゃけえ」ってエピソードだが、わたしも小学校卒業まで広島に住んでたから何となく覚えてる。でもこのエピソードは、「じゃけんって言わんのんじゃけえ問題」を更に深掘りしており、非常に面白かった。これは広島県に住んでた人間じゃないと作れないエピソードだな。

板垣巴留『BEASTARS』15巻

BEASTARS(15) (少年チャンピオン・コミックス)

BEASTARS(15) (少年チャンピオン・コミックス)

草食獣と肉食獣が歪な倫理観の下、共生するという、かなり独特な世界観の作品。新章に突入して、肉食と草食の更に深いタブーに踏み込んだというか。

新章突入と相まって、物語がここまで明確に一段階ディープになる作品って、思い起こすと、それほど多くない気がする。さあ、新しい島だ! 新しい敵だ! 敵は強いからこっちも新しい必殺技だ! という程度の展開は山ほど見かけるけどね。

余談

刃牙を描いている板垣恵介の娘さんらしい。同じチャンピオンだし、さもありなんという気もするが、全く気づかんかった。何となく女性作家の匂いがするなとは思っていたが、それも確信は持ててなかったし。

日本橋ヨヲコ『少女ファイト』16巻

少女ファイト(16) (KCデラックス)

少女ファイト(16) (KCデラックス)

リアルタイムで読んでいる場合と、まとめて読む場合では、やはり感じ方は違うらしい。

わたしは日本橋ヨヲコの作品が大好きだ。『プラスチック解体高校』『極東学園天国』『バシズム』『G戦場ヘヴンズドア』『粋奥』『少女ファイト』と、商業発売の漫画は全て持っているぐらいには好きだ。わたしとしては青臭さ全開のバシズムが最も好きかもしれない。いや、でも出世作『G戦場ヘヴンズドア』も何十回読んだかわからないし、そんなこと言ったら最新作にして最高傑作の少女ファイトに触れないのは……と、日本橋ヨヲコ(ついでにIKKI創刊当時の諸々)関連で、まあ数時間は話せるんじゃないか。それぐらい好きである。

ただ、リアルタイムで読んでいると、展開の遅さと刊行スピードの遅さがダブルパンチで読み手を襲った際、どうも極私的テンションが下がる作品というのは存在する。例えば、おおきく振りかぶって。例えば、ベルセルク。例えば、ハンターハンター(キメラアント編ね。一気読みしてテンション爆上がりしたが)。そして、本作、少女ファイト。

わたしは主人公が通う黒曜谷高校の面々の活躍や成長を見たいわけで、もっと言うと主人公たちと因縁のある白雲山学園・朱雀高校・青磁学園との戦いを見たいわけである。けど、まあ焦らす。とことん焦らす。話の流れ的にクライマックスはこの春高であることが匂わされており、白雲山・朱雀・青磁と戦う前にじわじわっと盛り上げていきたい気持ちはわかる。しかしわたしとしては、ポッと出のちょいキャラ(作者的には違うのだが)のエピソードが延々出てくるのはホント辛かった。で、12巻ぐらいからは、新刊が出たらとりあえず目を通して「まだまだ展開遅いなー」と思う、そんな感じでわたしのテンションはどんどん下がったまま、4〜5年が経ってしまった。

今回、16巻を買ったあとも、まー今回もダラダラと長いんだよねという感じでしばらくは読みもしなかったのだが、ふと気が向いて、数十回は読んだ序盤も含め、もう1回、1巻から読み返すことに。

……。

…………!

……………………!?!?

テンション爆上がりです!!!!!

あれほどテンポが遅いと思っていた12巻以降も、1巻から通して読むと、(まあちょっと間延びしているが)気になるほどではない。しかも15巻で壮大な謎(というか陰謀というかカラクリというか黒幕というか)が出てきて、これも最初に読んだ時はほとんど読み飛ばしていて「ふん」としか思わなかったが、ちゃんと1巻から読み返すと、色々なピースがこれの下、ガッチリとハマるような気がしてきて、とにかく凄いとしか言いようがない。

そして16巻で描かれる朱雀高校との戦いは、ほぼ神回と言って良い。これぞ日本橋ヨヲコという描写である。

これはもう少し詳しく書きたい。

わたしが思うに、日本橋ヨヲコは3つの価値観を持っている。生き様への価値観だ。

ひとつ。学校空間や学校生活は楽しいもので、かけがえのないものだという価値観。これはもうほとんど全ての作品でそうだ。でも今日あまり語りたいことではない。

もうひとつ。大切なのは「今・ここ」で完全燃焼することであるという価値観。SLAM DUNKでも語られたよね。「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本のときか? オレは……オレは今なんだよ!!」という名言。これを地で行くのが日本橋ヨヲコである。人生の価値は、細く長く生きた結果としてのトータル評価ではなく、瞬間最高到達点にある。そして人生のクライマックスシーンは本人が決めるべきものである、というものだ。これは『G戦場ヘヴンズドア』で強く示され、本作でも陣内監督の弔い合戦で示された。実は黒曜谷高校の校章や女バレのスポーツバッグにも示唆されている。今回語りたいのは、日本橋ヨヲコのこの価値観である。16巻が神回なのは、この価値観、いや生き様を、本来敵チームである朱雀高校の寺沼というキャラが見せつけてくれたことだ。

なお、3つ目の価値観は、2つ目で示した「今・ここ」で完全燃焼した後の話である。後先考えずがむしゃらに瞬間最高到達点を目指した結果、その人にとってのクライマックスシーンが終わってしまうことがある。あるいは挑戦に破れ、深い挫折を抱えることも。それでもなお、人は違うステージで生きて良いし、生きるべきだ……そんな価値観も日本橋ヨヲコは持っている。これは『バシズム』における「ストライク シンデレラ アウト」で強く示されたし、あるいは「インセクトソウル」における名言「五反田よ――っく見とけ オレがトラウマから立ち直る歴史的瞬間を」でも垣間見える。これも『G戦場ヘヴンズドア』における鉄男や組子の生き様で強く示された。本作においては、残念ながら主人公の姉の死をきっかけに多くの登場人物の時計が止まってしまったままだが、主人公はそのことに対して「呪いを解く」という決意を固めている。そう、呪いなのである。辛くても、人生の時計を進めなければならない、という強い価値観が示される。

さて、長くなった。17巻ではいよいよ青磁学園と戦うことになるようだ。今のところ「ラスボス感」満載だが、さてどうなるかな。楽しみ。てかあれだ、やっぱり長期に渡り連載している作品は、定期的にまとめ読みしないと駄目だな。

瀬野反人『ヘテロゲニア リンギスティコ 〜異種族言語学入門〜』2巻

ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~ (2) (角川コミックス・エース)

ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~ (2) (角川コミックス・エース)

今、最も「面白く」て、かつ「攻めている」漫画のひとつ。

何しろ、漫画を読むだけで、文化人類学のフィールドワークが追体験できるのである。しかも漫画で。

主人公は、文化人類学者のような人なのだが、師匠である学者先生が体調を崩し、独りで「魔界」にフィールドワークするという設定。ワーウルフ語は師匠が色々と解明してくれ、主人公もある程度マスターしているのだが、魔界にはワーウルフ以外の異種族が山ほどいるし、その異種族がワーウルフ語を使えるとは限らない。その中で、何とかコミュニケーションを取りながら魔界の奥地へと進んでいく。

さらには言語と言っても、身振りだったり、色だったり、リズムだったり、イントネーションだったりと、実に様々。例えば、先ほど主人公はワーウルフ語をある程度マスターしていると書いたが、2巻では古ワーウルフ語とでも言うべき言語が出てきて、そちらの方が単純で多くの異種族が使いこなしているのだが、主人公は法則が難しすぎて理解できない事態が発生している。だから読者もある程度、わからないまま先に進まざるを得ないわけで、それを楽しいと思う人か、至れり尽くせりの旅じゃないと嫌だと思う人かで、本作の評価は変わるかもしれない。

わたしは、これは漫画史に残る傑作になり得る作品だと思う。

芥見下々『呪術廻戦』7巻

呪術廻戦 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)

呪術廻戦 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)

主人公がイカレているという設定は、最近のジャンプの流行なのだろか。

本作といい、『チェンソーマン』といい、下手したら敵よりもイカレてたりして。

今回もブッ飛んだ感じが全面に出ていて非常にかっこいい。

けど展開早いな。10巻はないだろうけど、このまま行くと15巻以内に完結しそうだけど。

原田尚『サイクリーマン』1巻

サイクリーマン(1) (モーニング KC)

サイクリーマン(1) (モーニング KC)

サイクル or サイクリングとサラリーマンを掛け合わせて、サイクリーマン。最初はサイクルしかわからなかったが、リーマンもかけてるからこういう表紙なんだな。

主人公は社会人2年目の若手サラリーマン。納屋の整理をしていて、埃をかぶったロードバイクを見つけた主人公は、久々に自転車に乗ってみることにして、出先でたまたま出会った自転車乗りと知り合い、意気投合する。しかしたまたま知り合ったその人は、異動してきた会社の直属の上司に当たる人だった。しかし会社は会社で節度を持って接し、休日は自転車仲間として接することにする……とまあ、そういうプロローグ。主人公はかつてプロのロードレーサーを目指していたそうだが、膝にはぶっとい傷跡があり、プロとしてヨーロッパを転戦する弟との仲も微妙な感じ……と、主人公側に色々と明かされていない事情がある感じ。

これから主人公や上司がファンライドを通して自転車の面白さを(再)発見する物語になるのか、主人公が再度プロの自転車乗りを目指す物語になるのか、はたまた全く違う物語になるのか、今のところ予想がつかない。けど「自転車」という軸があってふわふわと読むだけでもけっこう面白い。

馬場康誌『ライドンキング』1〜3巻

プーチンを思わせる武闘派の大統領が、ある日、異世界に転生! というありそうでなかった設定。

この武闘派大統領は、人並み外れた体力と体術を持っている上、気合を入れると異世界で言う「魔力」を膨大に出力することができる、という謎チート能力を持っている。それでいて、金も名誉も不老不死も要らず、ただ強大な敵に挑んでそれを乗りこなしたいという強い思いがある……だから異世界で生息する竜だのケンタウロスだのを乗りこなしたい、とまあそういうお話。

まあ作者は、そんなこたぁどうでも良いから筋肉を描かせろ、と思ってるかもしれん笑

続きが楽しみな漫画がまたひとつ増えた。

遠藤達哉『SPY×FAMILY』2巻

父はスパイ、母は殺し屋、娘は超能力者(相手の心が読める)。

父は、敵国の要人に近づくために名門校に娘を入学させる必要があり、家族が必要だった。

母は、良い年をして結婚しないことで周囲から疑われるリスクを避け、殺し屋稼業を続けるため、家族が必要だった。

娘は、劣悪な施設から抜け出し、わくわくする毎日を送るために、家族が必要だった。

それぞれがそれぞれの出自や目的を隠し、かりそめの家族を作り上げる……そんな物語。

とはいえ母は天然キャラ寄りで、娘は(相手の心は読めるけど)頭が良いわけではないため、全体としてはコメディ寄りのドタバタ劇。

作画・ストーリーともに安定しており、安心して読める。