“極私的” 年間ベスト 9.11を改めて振り返る
今年最も考えさせられた本は何かと問われたら、この3冊のどれか(というよりも3冊のセット)ということになるだろう。9.11の同時多発テロをやや冷静な視点から見つめ直そうという試みは、決して陳腐化しないし、また陳腐化させてはならないと思う。
中山元『新しい戦争? 9.11テロ事件と思想』
中山元 編訳『発言――米同時多発テロと23人の思想家たち』
中日新聞・東京新聞取材班『テロと家族』
オウム真理教や地下鉄サリン事件の衝撃は死ぬまで忘れないだろう
オウムの一連の事件も、やはり陳腐化させてはならない日本の重要な出来事だと思う。ここには、麻原の暴走という一言で片づけてしまってはならない様々な日本の問題点を孕んでいる。我々日本人が考え続けるべき問題。1978年生まれの俺は地下鉄サリン事件は9.11に匹敵する極私的大事件だが、『アンダーグラウンド』と『約束された場所で』はこのブログを始める前に何度も何度も読んでいるので、その意味では大賞ではなく準大賞。
村上春樹『アンダーグラウンド』
村上春樹『約束された場所で』
フィクション
筒井康隆『文学部唯野教授』
作品内で登場人物が講義をするというメタフィクション的な作風。この饒舌さがハマるというか気持ち良いというか。
向山貴彦『童話物語』
ジブリで映画化してほしいぐらい好き。
ノンフィクション
原田宗典 選『バイトの達人』
文字通り、バイトに関わる様々な文章を載せたアンソロジー。小説もあればエッセイもあるが、関川夏央・吉本ばなな・沢木耕太郎・宮本輝・原田宗典・さくらももこ・椎名誠・立松和平・安岡章太郎・四方田犬彦・村上龍・村上春樹・吉田健一・島田雅彦・五木寛之・遠藤周作・中野翠・群ようこ・高橋章子・武田百合子という20名は、なかなかバラエティに富んでいて良い。
苅谷剛彦『知的複眼思考法』
人文科学のモノの考え方を易しく整理した本だが、自己啓発本としても必読。
岡田斗司夫『ぼくたちの洗脳社会』
着眼点が面白い。
歌田明弘『インターネットは未来を変えるか?――科学技術を読み解く』
「インターネットが世界を変える」という文字を、今、20年後の2022年に読み返している。
世界は変わったのか、変わらなかったのか? 当時のワクワク感がどんなものだったかは、以下の感想をぜひ読んでほしい。
参考:2001年読了 歌田明弘『インターネットは未来を変えるか?――現代社会を読み解く』
上記の姉妹書。こちらは2001年の感想なので正確には2002年のまとめに入れるのはおかしいが、まあセットで読むべきだよね。
山田和『インドの大道商人』
一時期ハマった異文化エッセイや紀行文の中で、最も心を遠くまで連れて行ってくれた本。とっても面白い。
関満博『現場主義の知的生産法』
現場主義を徹底するというのが良い。