
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/09/29
- メディア: ペーパーバック
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村上春樹は滅多にインタビューを受けないことで知られている。が、受けたインタビューには多くの時間を費やして誠実に回答しているということは、実はあまり知られていない。本書は、そうした村上春樹の側面が存分に味わえる一冊である。
重複する内容は出来るだけ取り除いたとのことだが、それでも十分に分厚い本であり、また個別のインタビューもボリュームたっぷりである。海外インタビューが主だが、日本のインタビューもある。また(村上春樹を好きな作家として挙げている)古川日出男のインタビューもある。
全編に渡って興味深い本だが、個人的には、特に海外メディアや外国人ジャーナリストのインタビューに着目したい。海外では(文化や言語の違い以外にも)村上春樹を受容する環境に大きな違いがある。海外では、発表順に作品が翻訳されているわけではない上、実は『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』いった初期の“習作”は翻訳されていないのである。そのため、例えば鼠三部作(四部作)といった概念そのものが存在しないし、日本人のファンや評論家とは違う観点で物事を見ている点も一部あるようだ。その結果として何がどう違うかを「これ」と一言で述べることは俺の手に余るが、例えば村上春樹の大学での卒業論文について言及したインタビューもあるなど、バラエティに富んでいて、実に面白いことは確かである。かなりオススメ。
余談1
村上春樹はサイン会なども滅多に行わないことで知られているが、期間限定でHPを解説し、読者とのコミュニケーションを(過剰なほどに)積極的にとっている。その成果が何冊かの本にまとめられているが、これもオススメである。村上春樹が決して人嫌いの偏屈な爺さんなどではなく、誠実な人間であるということがよくわかる成果物である。
余談2
最近の村上春樹のインタビューで俺が認識しているものとしては、『考える人』でのロングインタビューがある。このブログでも既に感想を書いており、一部インタビューの引用もしているので、興味のある方は下のリンクから飛んでください。
incubator.hatenablog.com