白色好『ガイシューイッショク!』1〜3巻

主人公は不動産会社の賃貸物件の若手営業マン。ある日、敷金も礼金も家賃も後払いで保証人もいませんが何とかしろ的な「これは無理だろう」という若い女性が家を借りに来て、それでも主人公は真面目に家探しを手伝うものの、当然上手く行くわけもなく、気がつけば自分の家の一室を無料で貸すことになってしまう。というか居座られる。文字通りの居候、居直りである。だが、この共同生活は週に1回の「勝負」とセットなのである。例えば10分間、男が女にいやらしい感じにマッサージをして、男が勃起したら男の負け、男が勃起する前に女が喘いだら女の負け、という非対称性のある勝負である。この勝負に勝てば、家事をしなくて良い。最初は家賃も払っていなかった。

実に下らない。

だが、それが良い!(断言)

「ちょいエロ」よりは結構エロいので、その方面が嫌な人は素直に回れ右すべき案件なのだが、個人的には結構ツボ。

4巻早く読みたいなー。

大久保圭『アルテ』1〜12巻

[まとめ買い] アルテ

[まとめ買い] アルテ

  • メディア: Kindle版
ルネッサンス期のイタリアを舞台とした、女性画家の一代記。

主人公(アルテ)は10代半ば(物語序盤で16歳だったかな)の少女で、貴族出身(ただし父親が死んでお金や格はだいぶ没落した貴族)である。しかし階級に依存せず、また女としてではなく一人の人間として自分自身の力で自律的に生きていきたいという思いが非常に強かった。その思いが溢れ出した結果、アルテは子供の頃から好きだった絵画の素養を糧に生きていきたいと、自宅の屋敷を飛び出してしまう。そしてフィレンツェ中の画家工房を回るのだが、「女だから」という理由で門前払いの連続の中、唯一「女だから」という理由で拒絶しなかったレオの工房に弟子入りをして、画家見習いとして活動を始める。アルテは、自分のために良くしてくれる親方のレオにあっさり惚れてしまうが、自分の一番の目的は色恋沙汰ではなく女性画家として生きていけるようになることなので、以降はその恋心にフタをして一心不乱に画家見習いとして修行をする……とまあ、こんな感じのアウトラインである。

わたしは女性が男性の所有物として抑圧されていた時代は確かにあったと思っている。で、面白いことに、その中で女性が不幸だったかと問われれば、おそらく必ずしもそうではなく、多くの女性は抑圧状態を当然のものとして受け入れて一生を終えていただろう。一方、本作の主人公アルテは、そうした生き方は嫌だとして、自分の生き方を自分で決め、自律的に生きようとする。

でもこれは難しい。

女性だから難しいわけでも、昔だから難しいわけでもない。今も昔も、そして男も女も、自分らしく自律的に生きるのは難しいのだ。社会に組み込まれた瞬間、なぜか人はがんじがらめだ……。

さて、ネタバレになるから細かくは語らないが、このアルテという画家見習いは当初の「がむしゃらだっただけの時代」から、じき変貌を遂げる。したたかに変貌する。昔は「女性」で「貴族」の画家見習いなんて駄目だろうと蔑まれていたが、今や画家見習いでありながら顧客を何人も抱えるようになる。

それは何故か?

自律的な人間は、したたかでなければならないなあ、と思った次第。

かなり面白い作品なので、ぜひ読んでほしい。大推薦。

竹内友『ボールルームへようこそ』10巻

競技ダンスと呼ばれるジャンルスポーツの漫画。

競技ダンス・ソシアルダンスは、いわゆる社交ダンスと呼ばれるものと言って良いだろう。ただ、ここで「いわゆる」と書いているのは、社交ダンスと聞いて多くの人が思い浮かべる、くたびれたおじさんが束の間の心の安寧を求めて若いお姉さんとゆったりダンス的な『Shall we ダンス?』の文脈や、上流階級の男女が嗜みとして身に付け、パーティーの場でゆらゆらと踊る文字通り上流階級の社交としての文脈ではない、ということである。あくまでもスポーツとしての強度や正確性が求められるものだ。

さて、本作は非常に面白いのだが、理由は知らないものの作品刊行ペースには物凄く問題がある。わたしが本作を手に取ったのは確か7巻あたりの刊行時だったように思うが、9巻の刊行が物凄く遅れてしまった。感覚的には3年ぐらいかかったんじゃないかな。感覚だけど。で、これはもう終わったかなと諦めていたのだが、9巻が発売されて、悪くはないけど雰囲気が微妙に変わったのをよく覚えている。で、そこから数年。もう昔すぎて覚えていないがこの辺でアニメ化もされたかな、でももう諦めも通り越して半分忘れていたのだが、やっと10巻が発売。こう遅いと、正直こちらのテンションを上げていくのが難しい。面白い作品だと、最新刊を読み終えた瞬間に「そら無理だけど早く続きが読みたい」とどうしても思ってしまうものだが、本作については「続き、発売されるのかな」としか思えなくなってきた。

いや、面白いんだけどね。

入江亜季『北北西に曇と往け』4巻

北北西に曇と往け 4 (ハルタコミックス)

北北西に曇と往け 4 (ハルタコミックス)

  • 作者:入江 亜季
  • 発売日: 2020/01/14
  • メディア: コミック
主人公が機械と話ができる特殊能力持ちで、今アイスランドに住んでいる。

で、主人公の弟は、色々あって日本で住んでいたが、行方不明に。何かの事件の被害に遭ったのでは……と主人公は心配するも、実は逆に、どうやら弟はサイコパス的なとんでもない嘘つきで、しかも被害どころか人を殺して回っているのではないか……という謎というか不安だけが提示され、延々と事件に立ち入ることなく遠回りしている感じ。

この「もったいぶった感じ」がいつまで続くのかな。

ハルタらしく、絵は抜群に巧く、雰囲気もあるが、弟が人を殺してるかもしれないってのに兄も爺さんも、のんきなこった。

遠藤達哉『SPY×FAMILY』3巻

敏腕スパイが、ターゲットに近づくために養子縁組したら、女の子が超能力者(相手の心が読める)で、偽装結婚したら彼女が暗殺者という超展開。

スパイ・暗殺者・超能力者が互いの秘密を隠しながら、かりそめの家族を作っていくというコメディ漫画。良い具合に肩の力が抜けており、めちゃくちゃ面白い。こういうのがスッと出て来るあたり、ジャンプの底力を感じるなあ。

山口つばさ『ブルーピリオド』4〜6巻

美術と無縁だったチャラ男系男子が、ふっと絵画に魅力に取り憑かれて東京藝術大学を目指す話。

7巻から藝大編が始まるので、その辺のストーリーは察してください。

凄く面白くてヒリヒリしたんだが、改めて冷静に振り返ると、素人が1年ちょっとで現役合格するのってリアリティがないな。まあ漫画だから良いか。でも、そもそも、そのような「リアリティがない」形で藝大に入るのは、果たして良いことなのだろうか。普通に考えたら、一発勝負で力を出して合格できたとしても、大学に入った後ついていけないよね。

福田晋一『その着せ替え人形は恋をする』1〜4巻

雛人形の作り手を目指す主人公が、ギャル系美少女のコスプレを支援するようになるお話。

画力が高い上、設定やストーリーに納得感があり、スッと読める。めちゃくちゃ面白いのと、Amazonのレビュー評価も高いので、注目されているんだろうなと思う。今後アニメ化まで行くんじゃないかな。

大推薦漫画。

暮石ヤコ『ソマリと森の神様』1〜6巻

人間がほぼ絶滅して人外の怪物が地表を支配した世界で、森のゴーレムは人間の少女と出会い、2人は父娘になる……という設定。

アニメ化もされてなかなか評判を呼んでいるようだ。

個人的には、やや設定が気になる点もあるのだが、概ね面白い。

感想を書けていない漫画を100冊まとめて 第7弾

新しく手に取った作品67冊と、続き物の作品33冊。

村田椰融『妻、小学生になる。』1〜4巻

もっとドタバタした感じをイメージしていたが、けっこうしっかりした物語。いつまで経っても奥さんに依存しっぱなしの父親と娘はどうかと思うが、こうなっちゃうのかな。

西尾雄太『水野と茶山』上下巻

非常に良く出来た青春物語。この漫画家は他の作品もぜひ読んでみたい。

久野田ショウ『一日三食絶対食べたい』全3巻

タイトルから流行りの食漫画なのだと思ったが、そうではなくてキャパオーバーでいっぱいいっぱいの若者の奮闘と家族物語をSF風味で楽しめる漫画。佳品、ということになるのだろうが、わたしは好き。

カツヲ『三ツ星カラーズ』1〜7巻

都会の下町で楽しそうに遊ぶ子供と、それを温かい目で見守る社会の大人を愛でる漫画。良くも悪くも、こういう社会は今時もうないんだよな。なお、今わたしが住んでいる上野が舞台なのも極私的にGOODだ。

オジロマコト『君は放課後インソムニア』2巻

1巻を読んだときは正直あまりピンと来ていなかったが、2巻を読んで面白くなってきた。オジロマコトの手法はあまり変わっていないんだが、なんだろう、単純に学校の天文台の中だけでチマチマやっているのが物語的につまらなかっただけなのかも。

丈『宇崎ちゃんは遊びたい!』4巻

献血ポスターで幸か不幸か話題を集めた作品。この人、なんか作画が安定しない印象があるんだよな。目の形を試行錯誤し過ぎて個人的に違和感があるからでは、と勝手に推察。

天原+masha『異種族レビュアーズ』4巻

これもテレビアニメ化で話題を集めた作品。この手の作品に性を商品にして云々とか女性蔑視的だとかいうケチをつけるポリコレ棒全盛の感想や評論はほんとにクソだと思う。だってこれは、異世界において種族を超えた風俗産業があったら、という思考ゲームから生まれた作品なわけで、男も女も、老いも若きも、あらゆる人々の性が消費されている世の中を描いた寓話なのだ。主人公が異性愛者の男性だから女性を性的に消費することが多いけれど、ほぼ動物だって性的に消費するし、植物だって性的に消費するし、男と男、女と女の性的な消費もある。当然、この世界には女が男を買うという風俗産業もあるだろう。2020年現在の価値観を無理やり当てはめて作品を批判するのは、繰り返すが端的に言ってクソだし、もっというと野暮だ。例えば、夏目漱石の『こころ』を読んで「もっとちゃんと行動すべき、死ぬのは良くない」という感想を抱くだけならまあご自由にどうぞという話なのだが、自殺するような作品は良くない、そのような作品が生まれる社会構造や読み手の意識に問題がある、作者は撤回すべき、と批判を繰り広げるのは実にトンチンカンな話である。しかし、これと全く構造なんだよな。

その他…感想割愛!

澤江ポンプ『パンダ探偵社』1巻、Batta『狐のお嫁ちゃん』1〜5巻、小林俊彦『青の島とねこ一匹』1〜2巻、小堀真『見上げると君は』1巻、一智和智『便利屋斎藤さん、異世界に行く』1〜2巻、一智和智『剥かせて!竜ケ崎さん』1巻、迂闊『日々是平坦』1〜3巻、谷口菜津子『彼女と彼氏の明るい未来』1巻、菅原亮きん『猫で人魚を釣る話』1〜3巻、長門知大『将来的に死んでくれ』1巻、TNSK『うちの師匠はしっぽがない』1巻、あまからするめ『うちのアパートの妖精さん』1〜4巻、足袋はなお『とけだせ!みぞれちゃん』1巻、テンコ『北海道は今日も平和です』1巻、白井慶太『ヌードルヘル』、安島薮太『クマ撃ちの女』1巻、日之下あかめ『エーゲ海を渡る花たち』1〜3巻、殿ヶ谷美由記『だんだらごはん』1巻、桜井海『おじさまと猫』1〜4巻、小賀ちさと『只野工業高校の日常』1巻、根田啓史『異世界行ったら、すでに妹が魔王として君臨していた話。』1巻、桜玉吉『日々我人間』、小梅けいと+スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』1巻、島田虎之介『ロボ・サピエンス前史』上下巻、平沢ゆうな『鍵つきテラリウム』1〜3巻、野人+小林嵩人『野人転生』1巻、佐原ミズ『尾かしら付き。』1巻、光永康則『時間停止勇者』1巻、田川とまた『ひとりぼっちで恋をしてみた』1〜2巻、とよたろう+鳥山明『ドラゴンボール超』1巻

藤本タツキ『チェンソーマン』5〜6巻、芥見下々『呪術廻戦』8〜10巻、栗山ミヅキ『保安官エヴァンスの嘘』10巻、保谷伸『まくむすび』2〜3巻、信濃川日出男『山と食欲と私』11巻、里好『踏切時間』3〜6巻、ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』3巻、山本崇一朗+稲葉光史『からかい上手の(元)高木さん』8巻、あfろ『ゆるキャン△』9巻、アキリ『ヴァンピアーズ』2巻、カルロ・ゼン+東條チカ『幼女戦記』17巻、板垣巴留『BEASTARS』17巻、浜田よしかづ『つぐもも』24巻、吉田丸悠『大上さん、だだ漏れです。』7巻、大童澄瞳『映像研には手を出すな!』5巻、こざき亜衣『あさひなぐ』32巻、小林有吾『アオアシ』19巻、ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』8巻、安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』8巻、小山宙哉『宇宙兄弟』37巻、雨瀬シオリ『ここは今から倫理です。』4巻、山本崇一朗『それでも歩は寄せてくる』3巻、岩本ナオ『マロニエ王国の七人の騎士』4巻

浅見理都『イチケイのカラス』全4巻

裁判官や書記官にスポットライトを当てて、彼らの物語を紡いでくれていたのが本作である。

しかし裁判官というのは難しい商売だと思う。裁判官に求められるのは公平・公正な判断である。理不尽から依頼人を守る弁護士や、社会悪を立件に繋げる検事と比べて、裁判官は夜の悪や理不尽と日々接していながら自分なりの正義感をぶつけるところが無い(もしくは少ない)ように見える。

裁判官がたまに行う「説諭」はその典型、というか象徴ではないだろうか。そもそも裁判官は量刑を出せば良いはずであり、説諭とは何だろうと考えると実に奥が深い。いわゆる名説諭と呼ばれるものがある一方で、説諭を意図的に行わない裁判官もいると聞く。また、今後AIが量刑判断をするようになれば、説諭はなくなるだろう。それが良いのか悪いのか、にわかに判断はつかない。

もっと言うと、裁判員制度も難しい。色々と議論されたが、一人の国民として、議論が尽くされたという気は全然していない。けど何となく制度が始まって社会に組み込まれ、何となく「ああ裁判員制度だよね」というレベルでは浸透した。でも裁判員制度の意義は全く浸透していないと思う。

裁判官や司法に関わる何となくの疑問は多いのだが、本作はこの手の疑問を漫画として掘り下げてくれている。こういう作品を読むと、フタをしてきた社会正義への思いが体の中から溢れ出してきて困る。主人公の先輩のエピソードとか正直泣いてしまった。ただ、わたしが本作を知った時には、既に全4巻で完結していた。ちょっと勿体なくないですかモーニングさん。メジャー雑誌でありながら、こういうマイナーだけど社会的に意義のある作品をきちんと連載してくれるのが、モーニングやイブニングだと思っていたのだが。作者が100%満足して完結したのならそれでも良いが、そうでないなら、絶対に復活させるべき作品だと思う。

感想を書けていない漫画を100冊まとめて 第6弾

新しく手に取った作品43冊と、続き物の作品57冊。

コトヤマ『よふかしのうた』1巻

これまで上手く立ち回ってきたのにふとしたきっかけで学校に行けなくなり、不眠も患ってしまった中2・夜守コウは、こっそりと家を抜け出して夜の街を徘徊していたところ、美しい吸血鬼と出会ってしまう……というプロローグ。『だがしかし』と同様、ゆるい雰囲気で、ゆるく読めそう。でもまだ傑作になるかどうかは様子見だな。

塚原洋一+臼井儀人『野原ひろし 昼メシの流儀』1巻

原作者の臼井儀人は2009年に亡くなっているのだが、Wikipediaによれば本作の連載が始まったのは2016年。つまり臼井儀人が「キャラクター原作」としてクレジットされてはいるけれども、あくまでも原作者本ではなく、遺族だか出版社だかの意向で作成されたスピンオフであろう。肝心の内容だが、正直読んでいて辛い。野原ひろしというキャラクターである必然性がそもそも皆無なのだが、それ以上に、モノローグが非常に説明調である。モノローグというか、説明調の不自然な独り言を第1話からペラペラ喋っている。これは漫画の仕上がりとして果たしてどうなのか。なぜOKが出ているのか? キャラクターありきの連載だから? とにかく素人のつまらないコントや一発芸を見せられているようで、いたたまれない気持ちになる。2巻を読むことはないだろう。

加藤雄一『やんちゃギャルの安城さん』2〜5巻

1巻だけ読み、正直あまりピンと来てなくて続刊は買っていなかったのだが、ふとAmazonのレビューを目にしたら凄い高評価なので、何となく気になって続きを買ってみた次第。さて、1巻の感想では、本家には劣るという旨の感想を書いたが、よく考えると本家とは何だろう。そもそもの話からして、男女間の「からかい」を全面に押し出した友達以上恋人未満の『からかい上手の高木さん』という名作があるが、この二番煎じ(と言ってアレならばリスペクトと言うか本歌取りというか)が『イジらないで、長瀞さん』だ。で、この『イジらないで、長瀞さん』の二番煎じが本作『やんちゃギャルの安城さん』なのである。いわば三番煎じ。しかも本作の4巻の巻末には、長瀞さんを描いているナナシという漫画家が絵を寄せている。何が何だかわからないね。ただ、『イジらないで、長瀞さん』と『やんちゃギャルの安城さん』はどこまで行っても女性が能動的で、男は受動的というか、巻き込まれ型というか、もっと言うと「ラッキースケベ」にあたふたするだけ、という構図が強い。この手の作品って、1回目は良いんだが、2回目を読み返したいという気はあまり起こらないんだよね。高木さんは読み返すけど。

まつだこうた+もりちか『あゝ我らがミャオ将軍』2巻

北朝鮮を思わせる独裁国家の跡継ぎが、わずか9歳の女の子だったら……というギャグ漫画。非常に高度な社会風刺とも読めるし、単に面白いほのぼの漫画とも読める。かなり好き。

その他……感想割愛!

新海誠+山口つばさ『彼女と彼女の猫』、がちょん太郎『異世界AV撮影隊』、山本中学『戯けてルネサンス』1巻、脊髄引き抜きの刑『そのうち結婚までいくけど今はまだ(期間限定無料版)』、高橋ツトム『四季彩 高橋ツトム短編集』、コトヤマ『だがしなど』1巻、久住昌之+武田すん『これ喰ってシメ!』1〜2巻、横田卓馬『ポンコツ風紀委員とスカート丈が不適切なJKの話』1巻、山本崇一朗『くノ一ツバキの胸の内』1〜3巻、井龍一+伊藤翔太『親愛なる僕へ殺意をこめて』1〜7巻、高橋ツトム『NeuN』1〜5巻、佐藤二葉『うたえ! エーリンナ』1巻、藤のよう『せんせいのお人形』1〜2巻、鈴木マサカズ『マトリズム』1〜2巻、田島列島『田島列島短編集 ごあいさつ』、じゃんぽ〜る西『私はカレン、日本に恋したフランス人』、柊裕一『履いてください、鷹峰さん』1巻、モリタイシ『あそこではたらくムスブさん』1〜2巻、ペッペ『ミンゴ イタリア人がみんなモテると思うなよ』1巻、星見SK『鬼島さんと山田さん』1〜2巻、柚アンコ『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』1巻、大石日々『プラネットガール』1巻、実樹ぶきみ『SHY』1巻、長蔵ヒロコ『煙と蜜』1巻

こざき亜衣『あさひなぐ』31巻、カルロ・ゼン+東條チカ『幼女戦記』16巻、小坂泰之『放課後ていぼう日誌』5巻、ビリー『シネマこんぷれっくす!』4巻、リムコロ『世話やきキツネの仙狐さん』5巻、山本英夫『HIKARI-MAN』6巻、徳弘正也『もっこり半兵衛』4巻、石黒正数『天国大魔境』3巻、泉朝樹『見える子ちゃん』2巻、石黒正数『木曜日のフルット』8巻、小林まこと+恵本裕子『JJM 女子柔道部物語』7巻、川村拓『事情を知らない転校生がグイグイくる。』4巻、小林有吾+上野直彦『アオアシ』17〜18巻、石塚真一『BLUE GIANT SUPREME』9巻、桜井画門『亜人』15巻、篠房六郎『おやすみシェヘラザード』4巻、ナナシ『イジらないで、長瀞さん』6巻、ヤマザキマリ+とり・みき『プリニウス』9巻、かねもりあやみ+久住昌之『サチのお寺ごはん』7巻、岩永亮太郎『Pumpkin Scissors』23巻、井上堅二『ぐらんぶる』14巻、ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』32巻、タナカカツキ『サ道』3巻、葵梅太郎『エルフと狩猟士のアイテム工房』3巻、殆ど死んでいる『異世界おじさん』3巻、荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険Part8:ジョジョリオン』22巻、山本崇一朗『からかい上手の高木さん』12巻、山本崇一朗+稲葉光史『からかい上手の(元)高木さん』7巻、とよ田みのる『金剛寺さんは面倒臭い』5巻、田島列島『水は海に向かって流れる』2巻、荒川弘『百姓貴族』5〜6巻、泉一聞『テンジュの国』5巻、おおのこうすけ『極主夫道』4巻、南勝久『ザ・ファブル』20巻、板垣巴留『BEASTARS』16〜17巻、錦ソクラ『今日からCITY HUNTER』5巻、久米田康治『かくしごと』10巻、三条陸+佐藤まさき+石ノ森章太郎+塚田英明+寺田克也『風都探偵』7巻、服部昇大『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』3巻、白浜鴎『とんがり帽子のアトリエ』6巻、ジョージ朝倉『ダンス・ダンス・ダンスール』15巻、Cuvie『絢爛たるグランドセーヌ』14巻、野田サトル『ゴールデンカムイ』20巻、原田尚『サイクリーマン』2巻、はっとりみつる『綺麗にしてもらえますか。』4巻、水あさと『異世界デスゲームに転送されてつらい』3巻、緑山のぶひろ『罠ガール』4巻、白井弓子『大阪環状結界都市』3巻、羽海野チカ『3月のライオン』15巻

漆原友紀『猫が西向きゃ』1巻

猫が西向きゃ(1) (アフタヌーンKC)

猫が西向きゃ(1) (アフタヌーンKC)

  • 作者:漆原 友紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: コミック
『蟲師』で一世を風靡した漫画家の最新作。

「フロー現象」という本作独自の概念が中心に置かれているが、これ、どう説明したら良いんだろう。

少なくともチクセントミハイの提唱する「フロー(ゾーン、忘我)」とは関係がない。

空間というのはゆらぎを持つもので、ときにバランスを崩して形を変えてしまうことがあり、これを浮動化またはフローと呼ぶ……といったことが、この世界の理科の教科書には書かれているそうだ。具体的には、ある一部分の桜だけが年中なぜか満開だったり、三叉路(Y字路)が七叉路になったり、物体のカドが全て丸くなったり、35歳の女性の姿形だけが10歳ちょっとの見た目に若返ったりと、まあ訳のわからない不思議な現象を引き起こす。これらは見える人にだけ見える幽霊のようなものではなく、またオカルトのようなものではなく、れっきとした「自然現象」であり、フローに遭遇した人々も「迷惑だな、けど仕方ねえな」といった感じで受け入れている。

崩れたバランスはいつか必ず元に戻るのだが、いつ戻るのかはフロー次第というところも大きい。だが主人公のようなフロー処理業者は、感覚で、このフローがどれぐらいで元に戻るのか大まかには予測することができる。またフローには幾つかの種類があるようで、例えば人の思念をきっかけに発生したフローは、その思念を解きほぐせばフローも元に戻ることがある。第1話で出てきた「三叉路(Y字路)が七叉路になる」という現象は、ある人物の将来への不安が引き起こしたもので、その悩みに付き合って解きほぐすことで、早期にフロー現象は解決した。

……と、一定のルールはあるようだが、全てが読者に開示されているわけではなく、分かるようでわからないような設定だ。この辺は作者の出世作『蟲師』にも通じるところがある。まあ面白くなるかどうかは作者の腕前次第ということになりそうだ。

なお、Amazonを読むと「蟲師のような作品を期待していたのに!」ってので低評価をつけている方が多いが、本作は蟲師とは端的に別作品であり、勝手に期待して勝手に低評価をつけるというのも非道い話である。ただまあ、蟲師はやや寓話的なところがあって、人間の業が見せつけられるケースや、善き行いをしても蟲によってそれが台無しにされるようなケースが多々あった。それに比べると、本作はもう少しほのぼのしている。

古橋秀之+別天荒人+堀越耕平『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』8巻

ちょっと信じられないほどの傑作漫画だと思う。

世界観や、チョイ役含めた登場人物の心情・行動原理に納得感がありすぎる。

これが「スピンオフ」なんだから恐れ入る。

堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』25巻

僕のヒーローアカデミア 25 (ジャンプコミックスDIGITAL)

僕のヒーローアカデミア 25 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:堀越耕平
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/12/04
  • メディア: Kindle版
本家ヒロアカは、面白いんだけど、面白くなり切れない、というのがずーっと続いている気がする。

24巻から25巻にかけて延々とヴィラン(敵)にフォーカスしているが、そもそも本作の主人公はヒーローを目指す少年だ。ヒーローvsヴィランというのは大人の世界で、そこに無理やり、学ぶ存在であるはずの学生を巻き込んでいくのか、どうしてもピンと来ない。

ヒロアカのスピンアウトである『ヴィジランテ』はその辺すごくよく練られていると思うんだけどね。ヴィジランテは本家を超えたスピンオフ作品というので、個人的には凄くお気に入りである。