インキュベ日記

書評2800冊・漫画評4400冊・DVD評400枚の「質より量」な記録サイト(稀に質も重視)

藤原正彦『若き数学者のアメリカ』

若き数学者のアメリカ

若き数学者のアメリカ

『国家の品格』や『日本人の誇り』といった教養臭い本を書いて久しい著者だが、若かりし頃はそれこそ挑戦精神や反骨精神を胸に海外に飛び出していた。

本書では、その頃の著者の姿が見えて面白い。

月村了衛『機龍警察 狼眼殺手』

機龍警察 狼眼殺手 (ハヤカワ・ミステリワールド)

機龍警察 狼眼殺手 (ハヤカワ・ミステリワールド)

警察小説であり、群像劇であり、近未来SFであり、龍騎兵なるパトレイバー的な人型兵器が登場するロボット小説でもある人気小説シリーズの第5弾。

短編を含め、これまで主だった登場人物にはスポットライトが当たってきており、今度は誰だろうと思ったら、技術班の女性だった。でも、全員とも言える。とにかく、『踊る大捜査線』あたりとは比べ物にならないほど複雑な組織戦が繰り広げられている。個人的には傑作だと思った。第5弾にして、間延びするどころか、どんどん緊張感が高まっていく。面白すぎる。

しかし本作は、これまでのシリーズと比べても異色である。龍騎兵による格闘シーンが描かれていないのである。本シリーズは「警察モノ」であると同時に本来「ロボットモノ」であり、これは異色としか言いようがない。ここまで圧倒的な完成度を誇っているのに、意外にアマゾンの点数が低いのは、これが原因だろうな。言うなれば、パトレイバーの劇場版第3弾『WXIII PATLABOR THE MOVIE3』みたいな位置づけなのである。

月村了衛『機龍警察 火宅』

機龍警察 火宅

機龍警察 火宅

警察小説であり、群像劇であり、近未来SFであり、龍騎兵なるパトレイバー的な人型兵器が登場するロボット小説でもある人気小説シリーズの短編集。

明らかに長編向きのシリーズだろうと思ったが、意外や意外、けっこう面白い。

でも個人的にはやっぱり長編の方が良いな。

月村了衛『機龍警察 未亡旅団』

機龍警察 未亡旅団

機龍警察 未亡旅団

機甲兵装という人型を模したロボットが市街地で使われるパラレルワールドにおいて、最新の技術を搭載した「龍騎兵」を要する警視庁特捜部の活躍を描いた小説シリーズ。

第4弾では、チェチェン共和国から侵入してきた女性だけのテロリスト集団との戦いが描かれる。龍騎兵のパイロットは警察官ではない。職業軍人、元ロシアの警察官、北アイルランドの元テロリストという、どいつもこいつも一筋縄ではいかない外部の人材がパイロットとして選ばれている。第1弾では職業軍人の姿、第2弾では元IRF(IRAの流れを汲む過激派という設定)のテロリストのライザ・ラードナー、第3弾では無実の罪で国を追われて悪党に身をやつした元ロシアの警察官ユーリ・オズノフに、それぞれスポットライトを当てていた。では第4弾はどうなるのかなーと思ったところ、これが特捜部の部長を支える二人の管理職にスポットライトが当たっている。そしてこれまで以上に警察組織で出世争いをすることの難しさが描かれている。めちゃくちゃ面白いなー。

月村了衛『機龍警察 暗黒市場』

機龍警察 暗黒市場

機龍警察 暗黒市場

機甲兵装という人型を模したロボットが市街地で使われるパラレルワールドにおいて、最新の技術を搭載した「龍騎兵」を要する警視庁特捜部の活躍を描いた小説シリーズ。

第3弾になって、ますます複雑に、そしてますます緊張感を増してきた。ロシア、もしくはソビエト連邦という国の難しさが露わになる。日本という国の難しさも。

佐藤優『十五の夏(下)』

十五の夏 下 (幻冬舎単行本)

十五の夏 下 (幻冬舎単行本)

ごく中流の(しかし教育投資を惜しまない)家庭に生まれた佐藤優が、高校1年生の夏に、東欧からロシアへの一人旅をする……というアウトライン、その下巻。

incubator.hatenablog.com

スイス、チェコスロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ソ連と単独で旅をする。しかもその大半が共産圏、社会主義国である。わたしは大変な衝撃を受けたし、率直に言って嫉妬もした。そんなことをする(できる)15歳がいるのかと。しかも今から40年以上も前、わたしより20歳近く年上の人間である。

多くの人が、15歳で社会主義国を見て回る経験は、一生の財産になるよと佐藤優に言う。そして実際、佐藤優はロシア外交官になるのである(本書によれば、佐藤優は元々、中学校の英語教師になって離島で教えたいと思っていたようだ)。

実に真っ直ぐな、素晴らしい本である。仮に自分の子供に国際感覚や国際志向を身につけてほしいのであれば、親は英語の勉強の前にやらせることがある。『深夜特急』や『十五の夏』を買い与えることである。

大推薦。

月村了衛『機龍警察 自爆条項〔完全版〕』下巻

機龍警察 自爆条項〔完全版〕 下 (ハヤカワ文庫JA)

機龍警察 自爆条項〔完全版〕 下 (ハヤカワ文庫JA)

機甲兵装という人型を模したロボットが市街地で使われるパラレルワールドにおいて、最新の技術を搭載した「龍騎兵」を要する警視庁特捜部の活躍を描いた小説、その第2弾。

いやー、面白い。パトレイバー的な設定なのだが、見事にパトレイバーとは違う警察モノのお話を展開してくれている。

なお、デビュー間もない頃に書いたからだろうか、第1弾の『機龍警察』と、第2弾である本作は、完全版として大幅に加筆されている。