インキュベ日記

書評2700冊・漫画評4000冊・DVD評400枚の「質より量」な記録サイト(稀に質も重視)

市井豊『聴き屋の芸術学部祭』

聴き屋の芸術学部祭 (創元推理文庫)

聴き屋の芸術学部祭 (創元推理文庫)

先日読んだ『米澤穂信と古典部』で、日常の謎にチャレンジした作品を米澤穂信が挙げており、興味を持って購入したのが本書。

私が読みたいと思ったのは「日常の謎」であって、ライトノベルではない。だが本書はライトノベル風味のミステリである。文章がなあ。

岡部武『グローバルCMS導入ガイド』

グローバルCMS導入ガイド

グローバルCMS導入ガイド

CMSはキャッシュ・マネジメント・システムの略。つまり資金管理のシステムである。

仕事の関係で入手して読んだのだが、今見たら、何と第2版が出ている。そんな! 感想を書く気が失せた。

米澤穂信『米澤穂信と古典部』

米澤穂信と古典部 「古典部」シリーズ (角川書店単行本)

米澤穂信と古典部 「古典部」シリーズ (角川書店単行本)

『氷菓』でブレイクしてアニメ化もされた「古典部」シリーズの、著者公認どころか著者が中心になり作ったファンブック。

古典部の新作短編が載っているとのことで購入してみたが、それ以外は本当にファンブックだなあ。ミステリの大御所作家との対談とか、正直あんまし興味ない。でも新作短編は面白かった。早く続編が読みたいなあ。次は長編かな。

米澤穂信『いまさら翼といわれても』

いまさら翼といわれても【電子特典付き】 「古典部」シリーズ (角川書店単行本)

いまさら翼といわれても【電子特典付き】 「古典部」シリーズ (角川書店単行本)

日常の謎×安楽椅子な青春ミステリである「古典部」シリーズ第六弾。

第五弾からかなり時間が経ってしまっており、正直もう続かないのかなと思っていたのだが、何とか続いている。今回は短編集なので全体的な印象は言いづらいのだが、やはり白眉は表題作「いまさら翼といわれても」だ。これは古典部の位置づけや、千反田えるのパーソナリティを揺るがしかねないエピソードであり、今後どう持っていくか非常に気になる。

いや、作品に倣うなら「わたし、気になります。」だな。

稲垣えみ子『もうレシピ本はいらない』

もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓

もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』の実践編とでも言うべき本。
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わたしは土井善晴の『一汁一菜でよいという提案』を読んで、深い感銘を受けた。受けたが、やはり続かない。自分で食べた食事に飽きたわけではないのだが、やはり忙しいときは「面倒」や「時間がない」が勝ってしまうのである。

本書は、調理器具や調味料など、自分で一汁一菜を続けてきた経験を書くことで、(土井善晴の本ほどの感銘はないものの)もう一度やろうかなと思わせてくれるきっかけにはなった。

機本伸司『卒業のカノン 穂瑞沙羅華の課外活動』

卒業のカノン 穂瑞沙羅華の課外活動 (ハルキ文庫 き 5-10)

卒業のカノン 穂瑞沙羅華の課外活動 (ハルキ文庫 き 5-10)

天才女子高生・穂瑞沙羅華と凡庸な主人公の活躍を描く『神様のパズル』の続編となる「穂瑞沙羅華の課外活動」シリーズである。課外活動シリーズとしては、『パズルの軌跡』『究極のドグマ』『彼女の狂詩曲』『恋するタイムマシン』に続く第五弾であり、完結作である。なお本書の「あとがき」がけっこう興味深く、わたしはSF的なモチーフばかり気にしていたのでこれまで全く気づかなかったのだが、幾つかの裏話的なものが開陳されている。それらも少しだけ補足しながら、シリーズ全体を振り返ってみたい。

まず出世作『神様のパズル』は、物理学を手がかりに「宇宙を人工的に作ることは出来るか」というモチーフでSFが組み立てられていた。ストーリーというかジャンルは言うまでもなくSFなのだが、その裏側にあるのは「自分とは何か」という深い問いであり、「自己愛」というテーマである。ヒロイン・穂瑞沙羅華は天才児であるが、いや天才児であるが故に、自分とは何かを深刻に捉え、時に暴走してしまう。
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課外活動シリーズ第一作『パズルの軌跡』は、脳科学を手がかりに「幸福を人工的に作ることは出来るか」というモチーフで展開されたSFである。本編である『神様のパズル』と同様、裏側には「自分とは何か」そして「自己愛」という深い問いがあるのだが、それに加えて課外活動というだけあって、天才児であるヒロインが、凡人である主人公と一緒に色々な経験をすることで、成長していくことになる。本作の裏テーマは……なんだろう、改めて考えると兄妹愛かもしれない。
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課外活動シリーズ第二作『究極のドグマ』は、生命科学を手がかりに「天才児を人工的に作ることは出来るか」というモチーフのSFである。本作は、穂瑞沙羅華が自分の出自を知って深い葛藤や絶望を経験するわけで、個人的には超重要な作品である。当然、「自分とは何か」「自己愛」は重要なテーマなのだが、それに加えて本作では動物愛という裏テーマがあるように思う。
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第三作『彼女の狂詩曲』は、一言で書き表せない重層的なプロットだが、敢えて書くならば「未知の素粒子発見を目指して建造された巨大加速器“むげん”の事業仕分けを回避することは出来るか」というテーマというかストーリーであった。本作の裏テーマは……なんだろう、本書の「あとがき」から推測するに、家族愛だったのかな。ここで穂瑞沙羅華の父親が色々と登場してきたような記憶もあるが、ちょっとうろ覚え。今度読み直そう。
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第四弾『恋するタイムマシン』は、タイトルの通り「タイムマシンを人工的に作ることは出来るか」というモチーフで、時間の謎を追求したSFである。タイトルにも「恋する」とあるのであまり裏側ではないが、SF的なモチーフの裏側には異性愛という裏テーマがあるようだ。
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最後に、第五弾である本作『卒業のカノン』は、「地球温暖化を解決できるか」もしくは「エネルギー問題を解決できるか」というモチーフのSFである。しかしこれまでのシリーズと決定的に違っていた点がある。これまでは、天才児であるヒロイン・穂瑞沙羅華の暴走によってストーリーの多くが展開していたのだが、穂瑞沙羅華は今回、事件を起こす側ではなく、止める側である。しかも宇宙太陽光発電事業の出資者に脅迫メールが来て、車に依存しない社会をテロで強制的・暴力的に作り上げていくという、なかなか過激なものである。

上記を踏まえてもう少し書いていくが、本シリーズは穂瑞沙羅華が様々な事件を通して人間として経験・成長し、「やがて“アガペー”――無償の愛にいたる」という構想だったことが、本書の「あとがき」で書かれていた。しかし無償の愛とは何なのか。少なくとも穂瑞沙羅華は聖人君子になったわけではなさそうだ。わたしが思うに、穂瑞沙羅華は自分のためにはならないことは、基本的にはやらないタイプである。当たり前であるとも言えるし、人付き合いが下手だとも言える。しかしいずれにせよ、他人のために何かをして、それが感謝されたときには嬉しいし、たとえ感謝されなくとも(すなわち見返りがなくても)誰かのために何かをすることがある。それが無償の愛だというのなら、本書で穂瑞沙羅華は、無償の愛を経験したと言えるかもしれない。テロは確かに憎むべき行為だが、穂瑞沙羅華が命懸けでそれを止める義理はないからである。

まあ(ネタバレになるから避けるけど)裏には色々と背景があり、本当に無償の愛だったかどうかは微妙だけどね。

しかしこれで穂瑞沙羅華の課外活動シリーズも完結かー。もう少し続けてほしかったが、このぐらいで作者も次のステージに進むべきなのかもしれない。

「読みやすい文体で余韻のある本」というのは貴重であり、わたしにとってはど真ん中のストライクである。完結はしたが、これから何度も大切に読み返していきたい。

冷泉彰彦『予言するアメリカ 事件と映画に見る超大国の未来』

予言するアメリカ 事件と映画にみる超大国の未来 (朝日新書)

予言するアメリカ 事件と映画にみる超大国の未来 (朝日新書)

なぜ映画をベースに批評するのか。

鏡も何も、現実そのものが映画より馬鹿げていて、現実そのものを分析すれば事足りるわけなのに。

ただし、この人は共和党的な考え方と民主党的な考え方をきちんと理解していて、かつ読者にしっかりと説明しようとしている。この二大政党制の考え方がわからないと、アメリカ社会の分析は全て的外れなものになってしまうと思う。その意味では、映画論的なアプローチな若干気に入らないものの、この著者は依然として一般ピーポーには極めて有益な書き手であり、本書も相対的にはアメリカすなわち国際動向を理解するのに重要な本だと言って良い。